今回が最後になりました。

  「クシュラの奇跡―140冊の絵本との日々―」という、研究論文に基づいた記録書をご紹介します。

  クシュラは生後まもなく、知的、身体的に次々と異常が発見されます。ひとりでは物を持つことも出来ず、昼も夜もむずかり、目も離せない状態でした。 ずっとクシュラを抱いたままの母親が、生後4ヶ月の時、切羽つまった気持ちから、絵本の読み聞かせをします。「たえまない苦痛と不安のなかにいるクシュラ に、絵本は心の友になった」のです。そして、クシュラは、沢山の愛に囲まれて、感受性豊かに、前向きに生きているそうです。

  「ことりをすきになった山」(アリス・マクレーラン 文 エリック・カール 絵 ゆあさ ふみえ 訳 偕成社)には、悠久の時が流れています。ゴツゴ ツした山には、何ひとつ住めず、山肌にじかに降りかかるのは、雨や雪だけでした。そして、その冷たさしか知らなかった山に、ある日、一羽のことりが羽根を 休めます。ことりの羽根のやわからさに、山は、いつまでもここに居てほしいと頼みます。でも、ことりは・・・。長い長い年月、ジョイという名前を受け継い だことりが、毎年一度だけ訪れることになり・・・そして、長い長い年月が過ぎ、草や木や虫が住めるようになった時、やっとジョイは、山の願いをかなえる為 に、木に巣をつくりにやってきました・・・。

  「子育ては待つことよ」と、子育ての先輩の言葉。私は、今、ようやく、その言葉をかみしめています。

  クシュラを育んでいる両親の忍耐はどれ程のものかと思います。その、ほんのわずかを、この絵本に重ねあわせています。

  子育ては豊かな経験をさせてくれます。ひとつの喜びの背景には、苦労や苦しみも沢山あって・・・。でもそれは、親の器も広げてくれ、心を豊かにしてくれます。

  「子ども」にありがとうと、感謝をしています。

  1年間あたたかい励ましや言葉をいただきまして、ありがとうございました。(小川 三枝子)

※ 引用文献:「クシュラの奇跡―140冊の絵本との日々」 ドロシー・バトラー著 百々佑利子 訳 のら書房