長い間「お話し」にたづさわってきた方々は、子どもたちに「日本の昔話」を語ってほしいとおっしゃいます。日本の昔話の中に、沢山の知恵がかくされているからです。私も「日本昔話百選」からえらんで、日本の昔話しを語ります。その中に「味噌買橋」という物語があります。

  正 直な炭焼きの長吉は、夢の中で「高山の町の味噌買橋の上に立っているといいことが聞ける」と老人に言われる。気になって出かける。2日、3日と橋の上で ずっと立っているが何も聞けない。すると、5日目に、橋のたもとの豆腐屋の主人が、毎日立っている長吉を不思議に思って声をかける。「夢なんぞ本気にし て」と笑われる。豆腐屋は「おらも夢を見た。長吉という男の家の庭の松の根を掘ると宝物が出てくる」という。これこそが夢の話し!と掘ってみると正夢な り。大金持ちになった―という短いお話し。正直であること、そして、宝物―しあわせは足元にあると教えてくれる。

  昨年日本で出版されたユリ・シュルヴィッツも「たからもの」(ユリ・シュルヴィッツ作・画 安藤 紀子 訳 偕成社)は、西洋版味噌買橋で、日本の話 しをベースにしたのではないかと思われる。中国にも、古いことわざで”足下を掘れ、そこに泉あり”とあるが、同じことを伝えていると思う。

  ユリ・シュルヴィッツの「よあけ」(ユリ・シュルヴィッツ作・画 瀬田 貞二 訳 福音館書店)は、漢詩からイメージをとって描いているが、彼は東洋の深い知恵、文化を絵本にしている。

  漫画的でない、しっかりした内容の絵本を、子どもたちにさし出したいと常々心しているなかの2冊です。 (小川 三枝子)

※ 参考:「日本昔話百選」 稲田浩二、稲田和子 編著 三省堂